春日山原始林は、春日大社の東方にある御蓋山や花山といった山々に広がっている原生林です。1998年に「古都奈良の文化財」の遺産群の1つとして、世界文化遺産に登録されました。
御蓋山には春日大社の祭神が降り立ったと伝わっており、山頂には本宮神社が建っています。841年以降は森林の伐採が禁止され、現在に至るまで古くからの植生が保たれてきました。1924年に天然記念物、1956年に特別天然記念物に指定されています。世界文化遺産に登録されている広さは約300haです。
春日山原始林が世界自然遺産ではなく、世界文化遺産に登録された理由は、日本古来の自然崇拝に基づいて保存されてきた経緯があるためです。貴重な自然が残っているのに加え、人と自然との関りを示す古都奈良の文化的景観として世界文化遺産の構成遺産になりました。世界文化遺産に登録されている範囲の内外には、平安時代以降僧侶の修行の場であったことを示す石仏や石窟仏なども残っています。
現在も春日山原始林は聖域として立ち入りが禁止されていますが、毎年季節ごとに春日大社の神職と巡拝できる日があります。事前予約と参加費が必要なうえ、参加資格も定められているので気になる方はぜひチェックしてみてください。
春日山原始林の周囲を取り囲むように通っているドライブウェイやハイキングコースはいつでも利用できます。春は山桜・八重桜・山藤、夏は蛍、秋は紅葉を楽しめます。道中、鹿の集団に遭遇したら、静かに道を譲ってあげてくださいね!
春日山付近はシカの食害が甚大な地域であり、原生林の中でも「ディアライン」と呼ばれる食害の形跡が確認できます。
(Deer Line:シカの口が届く範囲である、地面から地表2メートル付近まで、植物がほとんど生えていない状態)